霞ヶ浦意見交換会


第9回 霞ヶ浦意見交換会 議事要旨

日   時:平成16年10月3日
場   所:ホテルロイヤルレイク土浦
参加者数:123名(座長、話題提供者、行政含む)
議   題:「霞ヶ浦における水質改善に向けて」

参加者名簿(座長、話題提供者、行政)
 
名  前
所    属
座長 前田 修 富士常葉大学教授(湖沼生態学)
話題提供者 田渕 俊雄 元東京大学農学部教授
行政 唐澤 仁士 国土交通省関東地方整備局霞ヶ浦河川事務所
横田 雅良 独立行政法人水資源機構霞ヶ浦開発総合管理所
海野 富夫 茨城県企画部
幾浦 久 茨城県生活環境部
斉藤 孝次 茨城県生活環境部
小森 隆太郎 茨城県農林水産部
和田 正寿 茨城県農林水産部
安見 精造 茨城県農林水産部
安藤 健二 茨城県土木部
小林 達也 茨城県土木部
三輪 文夫 茨城県企業局

以下は主な議事

平成15年度水質調査結果の概要についての報告

     茨城県霞ヶ浦対策課より、平成15年度の霞ヶ浦の水質調査結果の概要について報告を行った。

話題提供:「霞ヶ浦における水質改善に向けて」(元東京大学農学部教授 田渕 俊雄氏)

     田渕俊雄氏(元東京大学農学部教授)より、「霞ヶ浦における水質改善に向けて」と題して話題提供をいただいた。

質疑応答

座長: 田渕先生より、合併浄化槽の問題、多頭飼育の問題、希釈水の確保のための森林の問題など、霞ヶ浦に関する多岐にわたる様々な問題についての、また、保全計画の仕組みやこれを動かすための独立的基金、税金の問題、そして最後には、他人事ではないという認識からパートナーシップが重要という提案をいただいた。ここで、先生の話題提供に対し、質問があれば伺いたい。
野原: 先生のお話は大変参考になった。如何に霞ヶ浦が幅広くいろいろな面で意味を持ち、私たちの生活に直接関わっているというお話を伺った。ハードの面のお話が中心であったが、やはりソフト面の整備、即ち、幼児教育から環境問題を扱っていくことが必要かと思う。
田渕: 仰るとおりである。その点については、今度できる霞ヶ浦環境センターに環境学習ができるような展示もし、場もつくるということになっているので、流域の全市町村の小学校には、必ず一度は環境センターに訪ねて学習をして欲しいと思う。センターだけでなく、いろいろな機会があると思うが、本当に環境学習は大事だと思う。
奥井: 白濁が問題になっているが、白濁は、植生や生態系に対する影響が非常に大きいと思われる。霞ヶ浦の色がコーヒー牛乳のような色でずっと推移しており、ちょっと恐ろしい気がするが、白濁について総合的に研究をしている機関はあるのか。
幾浦: 白濁の問題については、霞ヶ浦河川事務所と定期的に監視を行っている。河川事務所から試料提供を受け、水戸にある公害技術センターで月に1回程度、測定を実施している。また、内水面水産試験場では、植物プランクトンの状況の調査を継続して行っている。
岩波: 森林が全国平均値の1/3と非常に少ないというお話があった。しかし、山を増やすのは時間もかかるし大変であることから、排水基準を少し強めにしては、というお話があったかと思う。全国平均値程度の森林面積の場合の効果を得るまでには、どの程度まで排水基準を強化すれば良いのか。
田渕: おおよその見当では、3倍程度必要。
座長: 水質改善には、排水基準を達成した上で、さらに森林からの水で希釈する必要があるが、希釈する水がないことから今のお話になってくるのだと思う。希釈する水がないのであれば、さらにどこかを絞る必要があるのだが、どこを絞ればみんなが納得するかというのは、これからの議論で、そういう議論が必要だということが、恐らく先生のお話であった。基準を守れば良いということではなく、これから長くいろいろとお互いに考えていく必要がある問題である。

(休憩)

意見交換

座長: 先ほど、田渕先生より水質に関するこれまでの流れ、現状が説明され、これを改善するに当たっての様々な問題を田渕先生から提起していただいた。これを踏まえ、皆さまのご意見を伺いたい。
これから如何にすべきかということは、結局流域全体の問題であり、見方として、行政としてはこういうことをやっていくべき、という観点がある一方、我々流域に住んでいるものがどのようにしていくべきかという観点もある。
この2つの観点に分け、前段では、政策的にあるいは行政としてこういうことを取り上げ、こういう風にやっていくべきではないか、というご意見を伺いたい。
堀越: 高度処理型の合併浄化槽の話があったが、生活排水対策重点地域に指定されないとなかなか難しい。申請をするのは各市町村だと思うが、申請をしていない市町村は、この流域にどのぐらいあるのか。
また、市町村型の浄化槽は全ての市町村で設置してもらいたい。設置は行政が行い、維持管理費を住民から徴収するという方法でやってもらいたい。
もう一つ、公共下水道の排水をもっと高度処理して希釈水として使えないか。公共下水道からでる水量がどの程度あり、森林面積に換算して何ヘクタール程度の希釈水の容量があるのか。そして、下水道の水を湖に放流せずに、新川の上流などに放流するといった対策を県で実施できないか、ということを伺いたい。
小林: 平成15年度末の放流水の水質状況は、CODで20mg/Lの排水基準に対して放流水は5.6mg/L、窒素は排水基準20mg/Lに対して5.9mg/L。リンは1.0mg/Lに対して0.12mg/Lという状況である。霞ヶ浦の環境基準は、窒素では3mg/Lであるので、倍程度の水質であり、年間約2,500万m3の水が霞ヶ浦浄化センターから出ている。排水基準は十分に満たした高度処理を行っているが、それでも環境基準と比べると高い数値になっている。それを希釈水として新川へというお話だが、設備投資等の問題もあり、この場で私からはお答えしかねる。
座長: 霞ヶ浦の環境基準から見ると高い数値だが、排水基準から見ると極めて低いレベルには処理している。特に窒素をもっと下げられないかという話もあるが、技術的に検討はされつつも、かなり厳しい問題であり、また、どこまでお金をかけるかという問題もあり、将来の課題としては、下水道だけではなく、県全体として考えていかざるを得ない。
下水道処理水が年間2,500万m3という話だが、霞ヶ浦に年間に流れ込んでいる水が14億m3であり、割合を考えると、とても下水道を何とかすれば全体が何とかなるということではないというのが現状だと思う。
次に、高度処理の合併浄化槽設置の推進の件について回答をお願いしたい。
斉藤: 合併処理浄化槽の現在の補助状況であるが、国の方でも浄化槽の予算については、前年度比30%前後の増加を示しており、積極的に事業を進める形で対応している。県の政策としては、高度処理型の浄化槽の補助制度を流域全体の市町村に進めるよう対応しており、今現在は、窒素除去型については全市町村で,特に窒素・リン型については約6割の市町村で補助制度を導入している。来年度に向け、全市町村で、窒素・リン型の高度処理浄化槽の補助制度を制度化する見込みになっている。市町村型の高度処理浄化槽の設置事業ということであるが、平成16年度から県で補助制度をつくり、現在は鉾田町で計画を策定しているところである。それ以外のいくつかの市町村においても導入に向けて検討を始めているところです。
奥井: 20年程前に土浦の自然を守る会で砂利取りを禁止して欲しい旨の要望書を出した。先ほどの田渕先生のお話で、西浦においてリンの除去能力が落ちたとあったが、砂利取りによって湖底に穴が開き、穴の中で嫌気性菌が発生しているのではないか。砂利取りの禁止は、霞ヶ浦の水質にとって安価で良い対策と考える。琵琶湖では砂利取りは禁止されたと聞くが、茨城県はどう考えているのか。
所長: 3年単位で砂利の採取計画を策定しており、現在は第13期である。過去に地形を調査したところ深堀りしているところがあったが、今は、深く掘ることはやめ、Y.P.-4mより深くは掘らないよう指導するとともに、近年は採取許可量を減らしながら採取許可をしている。砂利採取は地域の産業でもあることから、採取方法についても、業者と調整して対応しているところ。
座長: 砂利については前々回あたりの意見交換会で資料が提示されているが、深堀りは禁止されているということが既に報告されている。
奥井: 業者を守るということのようだが、霞ヶ浦の砂利取り業者の数は微々たるものだ。霞ヶ浦の水を飲んでいる市民の方がずっと数が多いので、この問題について積極的に対応していただきたい。
座長: 業者を守るというよりは、首都圏全体として塩分を含まない砂利が少なく、霞ヶ浦はその数少ない供給源になってきたという事実がある。これを全部一遍にやめてしまうと建築関係に支障が起きてしまう。河川事務所がこの問題の全てについて考えるわけではないが、現実には採取量を減らしている。減らしてはいるが解決はしておらず、だんだん時間をかけて何とかしていく方向にはあるのですよね。
所長: そうです。
沼澤: 汚濁物質は河川を通じて霞ヶ浦に流入するが、昔の河川の地図を見ると、中流、下流に湿地が多かったため、流れ下る中で汚濁物質が沈殿したり、植物あるいはプランクトンに吸収されたりして、きれいな水になって霞ヶ浦に流入していくという状況だったのではないかと考える。例えば、霞ヶ浦町の方に流れていく一ノ瀬川という川があるが、水源である神立周辺ではCODも窒素もリンも高い。しかし白鳥小学校のところの鶴沼を経て下流になると水質が改善されている。鶴沼自体が自然の浄化槽の役割を果たしている。鶴沼のような自然の湿地、遊水池を他の川で復活させるということが大事なのではないかと思っている。石岡の山王川のカイジ地区に湿地がある。巴川では、鉾田に広大なアシ原があるが、巴川と切り離された形で、ただの遊休地なっている。このようなところを県なり国なりで買い上げて、もとの遊水池あるいは湿地として戻すということを湖沼水質保全計画の重要な項目として挙げることはできないか。
安藤: 仰られたご意見は貴重な意見として拝聴するが、現時点では民地を買収して,湿地に戻すことは困難な状況です。持ち帰り、そういうご意見があったということで今後検討していきたい。
沼澤: ハンガリーのバラトン湖はアオコが発生するので有名な湖だったが、ここでは内湖を造成して、この内湖を通すことで河川の水をきれいにしたという事例がある。霞ヶ浦も昔はそうだった。今はそれがなく自然浄化能力が失われている。河川の自然浄化能力の向上ということを行政の方には考えていただきたい。我々住民もそういう認識を深めていきたいと考えている。
座長: この問題は非常に難しい問題であるので、関係各位、そういうご意見があったということを踏まえてこれからよろしくお願いしたい。
植田: 田渕先生のお話の中で、霞ヶ浦基金のような基金を持つなり実際の行動できる予算を持つことが大切だというお話があった。政策課題と技術課題とをバランスさせながらやっていく必要があるという貴重な提案をいただいた。こういう話しは前から聞いているが、河川事務所や県には、このようなことが行政的に出来るのか出来ないのかを簡潔に説明していただきたい。
幾浦: ずっと前にさかのぼるが、霞ヶ浦開発事業が行われたときに利水者負担ということで、東京、千葉、茨城県の水道事務所など開発した水を使う方から相当なお金をもらい、霞ヶ浦対策基金というのを県の予算の内部にためた。このお金で下水道の整備であるとか対策を水源地対策特別措置法に基づいてかなり集中的に実施した経緯がある。
基金というのは非常に安定的なお金であり、単年度ごとに決まる予算より計画的に使えるお金である点でいいご提案だと考えるが、積み立てるお金を誰からもらうのか、広くもらうのか、県の一般会計の予算の中から別途積み立てていくのかが問題となる。
座長: 霞ヶ浦の水があちこちで使われているが、では割り前をよこせという話がでてくる。そういう仕組みで動いているところは他にあるが、霞ヶ浦ではそのようになっていない。
幾浦: 実際に加入者負担金は何百億という単位でもらっている。それは水源地整備事業の中に投入してきた。
植田: 国の方では、そのような予算の検討はされているのか。
所長: 霞ヶ浦の中の事業については、国の事業として国会の承認を得た後、国の予算で事業を行っている。霞ヶ浦周辺の河川と流域については、茨城県の事業として、現在展開されているところである。
霞ヶ浦流域全体で見れば、国や県の事業それぞれで調整をしていく必要があるという認識で、県と我々とで毎年数回調整会議を行って調整しながら事業を実施している。
また、湖沼水質保全計画においては、5年ごとの計画であるが、調整会議の中でお互いの具体の事業の調整を行っている。
大島: 先ほどの田渕先生のお話で、燐というのは確かに5%ぐらい削減した。これはすごい行政の成果だと思うんです。5%削減されていながら、湖沼の中ではふえている、何もあらわれていない。それでは、燐がふえた原因についてどういうふうに考えているのか、という説明を資料6の中で見ることができなかったんですけれども、有機洗剤を使っていたときに大量な燐が出たんですが、昭和60年ぐらいに燐の濃度がほうっておいても0.05ppmまで減少しているわけですね。こういった自然できれいになったのはなぜか。それから、それから以降増加していって、今、高値安定の0.1ppmになってしまった。その因果関係をきちんと解明して、どれが一番効果的であったのか、それを考えないで、何か削減、削減といっていますけれども、下水をつくるのは、お金がたくさんかかりまして、もうほとんど不可能です。
 そして、田渕先生がおっしゃってくださいましたように、排水基準というのは環境基準に比べたらけた違いに高い値であって、その水を幾ら放水したところで、霞ヶ浦は汚れるだけなんですよね。そういうことをきちんと考えて、原因と結果をきちんと考えたときに、台風16号と18号というのはすごくすばらしい現象を霞ヶ浦に示していってくれました。16号、18号で霞ヶ浦に吹いた風速は20mです。最大波高2mに達しました。そうしましたところ、濁度が50度から 200度までに上がりました。そして、全燐の値は 0.09ppmから0.2ppmまで、2倍以上の高さになってくれました。それがほんの半日もしないうちにもとの0.09ppm になりました。よく霞ヶ浦の泥から燐が溶出するといっていますけれども、溶出したものであるならば、その溶解度に応じまして、そうは簡単に落ちないわけですよね。それが簡単に落ちたという現実は、巻き上がり現象によって巻き上がったものが沈殿する過程で落ちていったということを示しているわけですよ。
 しかし、ホームページには、残念ながら、窒素・燐の4割は底泥からの溶出によるから、ヘドロの浚渫を行わなければならない、ということがメーンで書かれているわけです。そして、実際見ていきますと、ヘドロの浚渫と燐の濃度というのは相関係数が 0.8以上あります。奥井先生が心配された砂利と比べても問題になりません。砂利は泥のあるところは商売にならないんですよ。ヘドロは薄く取っていくんですけれども、薄くかんなをかけたようには取れないんです。必ず凹凸地形ができます。その凹凸地形のところに腐泥がたまります。その腐泥は土が1に対して水が10、含水比でいうと1000%です。それは一風起きますと簡単に舞い上がります。それは東京湾、瀬戸内海で嫌というほど経験してきました。
  ですから、ヘドロの浚渫をやめてくれたら、3年で環境基準の目的がただで、ゼロ円で達成することが可能です。その次に、そのお金でもって田んぼの方に水を回してくれたら、きれいになっていって、泳げる霞ヶ浦というのは、僕にいわせれば、10年で実現してごらんにいれます。以上です。
座長: 今のはご意見ですから、そういうご意見もあるということで・・・
大島: 反対意見があるなら聞いていただきたい。いまだに浚渫をしなければならない根拠を教えていただきたい。
所長: 霞ヶ浦の浚渫は、今、土浦沖と高崎沖の2ヶ所で展開している。当初調べたところ、高度成長期以降に堆積したと思われる表層30cmぐらいの底泥の窒素とリン濃度が高いという結果で、その部分について、ワカサギの産卵期、漁期を外して12月から5月初めまでの間において約15万m3の浚渫を行っており、全体の約8割方が終わったところである。浚渫の方法は、カッターで表層の30cmに刃を入れて吸い取るという方法で実施しており、過去にあったような大きな凸凹は、今は発生していないと確認している。
大島: 近代産業になってから30cmたまったというのはうそだ。年間に2mmか3mmしかたまらない。30cmというのは圧密計算をすると大体約150年前のものになる。厚さを測るにしても含水比幾らでもってどのように測ったのか、また、30cmの微地形をどういう音波探査で計測すれば明らかになるのか。
座長: この話は前からいろいろあるが、今日は時間がなく、何れもう少し深めた議論をする機会を作れればと思う。
真山: 今日ここにおいでのWBSの人たちと共催で湖中のゴミについていろいろと対策を考えてきた。県の方は霞ヶ浦湖中のゴミにどんなものがあるかご存知か。湖岸のゴミは各市町村総出の一斉清掃で全部取る。しかし、湖中のゴミには意図的に捨てられるものが非常にたくさんある。国や県が監視員をつくるという話を以前聞いたが、その辺の制度はどうなっているか。
つい昨日も麻生の方で(清掃を)やった。国、県、各市町村、住民が一緒になって捨てる前のところで止めるような施策を早急に作らなくてはならないと思う。
さらに、農村環境課に伺いたいが、田んぼに捨てられたゴミについては、流域市町村の方々や土地改良事務所の方たちが総出でゴミ拾いをやらなければならない状況だが、そういうことについての啓発、監視員の制度など対策はどのようになっているのか伺いたい。
吉田さん、昨日、どんなものが出たか参考までに・・・
吉田: 昨日、潮来の前川でゴミ拾いをした。水中からのゴミとしては、農機具、バイクが10台程、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、ロッカー、オムツが出てきた。リサイクル家電製品が多い。潮来市のクリーンセンターで処分してもらったが、一般ゴミのようなものが330kg。ほか河川事務所にお願いするゴミが驚くほどあり、ゴミ拾いをして申し訳なかったかなと思うほどだった。住民の皆さんが意識を持たないと絶対になくならないと思う。
座長: ゴミ処理にお金を取るようになってから投棄する人が増えてきた。ゴミについて監視員をつくろうかという話を前霞河川所長がされていたが、今はどのようになっているか。
所長: 前回の第8回意見交換会において、前所長よりゴミの監視隊、あるいはゴミレンジャーのようなものをつくる構想があったが、まだ、具体的にどういう形で進めていくかというところまで煮詰まっていない。ゴミが捨てられないような環境づくりは大切と認識している。
斉藤: 不法投棄対策については、今現在、市町村とも連携をし、不法投棄のボランティア監視員という制度を全市町村で設けている。廃棄物に関係する業界の方も含めて県内で500名体制となっている。また、不法投棄は夜間に行われることが多いことから、夜間に仕事を行っているような業界団体と監視協定を締結している。それ以外にもポスターやチラシ等、広報に努めている。
鈴木: 最近、水田の冬期湛水が効果があるというような研究がなされているが、どのような効果があるとか、もっと湛水を推進するというような方向で県や河川事務所で推進していただくと浄化されるのではないかと思う。
幾浦: 具体的に大規模に実施しているわけではないが、環境教育の一つとしてH14年、15年、16年に休耕田を少し借り、水を引くということを、鹿嶋市と麻生町と大洋村で実施した。管理は、各小学校に協力してもらった。H15年度は鉾田町と潮来、今年は鉾田と北浦については継続実施、潮来については新たに潮来小学校で管理していただいている。
座長: この件については、研究途上で、効果があるという形になればだんだん政策の方にも反映されていくと思う。
清水: 窒素・リン酸が増える問題については、日本には海外から食料や飼料入ってきているし、化学肥料も耕地に施肥され、その分、窒素、リン酸として河川、海洋に流れていく。霞ヶ浦のように先詰まりになった池では、たまってくるのは当然のように私には理解できた。
基本的には、窒素・リン酸は、浄化で済ませるだけでなく、固形物にして食糧生産国に肥料として輸出して、地球規模で自然循環させなければならないというのが私の主張だ。茨城県としてこの点についてもお考え頂ければと思う。そこまで行かなくても現時点においてでもいろいろな汚泥の発生源を抑えていくという方法は各々あると思う。
座長: 二つのお話があった。一つは、農地還元のように汚泥を肥料にして畜産に使用する等の循環の話、もう一つはフレームを抑制する施策が必要だというお話のように伺ったが、対策課、いかがか。
幾浦: 畜産については農地還元しており、霞ヶ浦流域では使い切れないほどあるのではなかろうか、というのが先ほどの田渕先生のお話であったと思う。出来る限りその地域で循環させる研究をしている。バイオマス研究事業を実施しており、(汚泥を)発酵させて発電してそれを液肥に使うとか、それから炭素をとろうというようなことはやっている。なるべくなら、そこで循環させるというのが一番いいのだろうと思う。
肥料のフレームの件については、湖沼水質保全計画では数値目標を掲げることは出来なかったが、投入する肥料の量を抑制することを自主的に実施している。例えば、畑については施肥の適正化のため、溶出抑制肥料の導入、施肥料の削減指導を行っており、目標としては年間使用量を2,893tに抑えようとしており、平成15年度で見ると、計算上であるが、2,480tと目標の枠内におさまった。レンコンについても、溶出抑制肥料の導入や施肥量の削減、かけ流しの防止などの指導により、年間1,935tに対し1,717tと指導が奏功したのではないかと思っている。
座長: 要するに、流出の原単位を抑制するというようなことを指導的に実施してらっしゃるということですね。
田渕: 収支について、入ってくるものが多すぎるというのは全くそのとおりだ。日本全体で、とにかく食料やエサで入ってくるものが多い。霞ヶ浦流域については、畜産のエサはほとんど外国から入ってきていると思うし、養殖コイのエサも流域外から入ってきている。それら全部が家畜やコイを生産して使われてしまえば良いが、むしろ大部分は糞尿として出ており我々が困っているわけである。
外部から持ち込むものを減らしたり、リサイクルすることが大事であるというのは仰るとおりである。畜産の場合は、過密的に行われるというのが世界的な傾向で、オランダが一つの象徴的な国であるが、オランダでは、豚の糞尿を国内では使いきれないということで輸出している。日本でも糞尿をタンカー等でエサを輸出している国へ返すということも考えられなくはない。
一方で、糞尿は貴重な資源でもある。特にリンの資源が間もなく枯渇すると言われており、どこかでこのリンを凝集して保存する技術ができないものかと思っている。
それから、水田の冬期湛水の話だが、エコ水田として脚光を浴びている。水田は稲を作っているときは湛水しているが、それ以外のときは機械化のために水を落として乾かしてしまう。これを見直す必要がある。冬期も湛水することにより、メダカ等が越冬でき、また、渡り鳥の餌場になる。水田農業をやる立場からすると儲かる話ではないが、水に恵まれた土地であるので、野鳥のためにあえて排水しないで湛水しておこうということである。
また、田んぼには特に窒素を除去する能力があり、除去能力は濃度に比例する。高濃度で困っているところは霞ヶ浦流域にはたくさんあり、そういうところは大体台地に高濃度のものを出すものがあり、そこから流下して谷津田というところに高濃度の水がでてくるところがある。そこに休耕田があれば、冬期湛水をしてやれば窒素が取れる。ただし余り水温が低いと(5℃以下)脱窒菌が機能しないが、秋と春であればかなりのものが取れると思う。あまりお金はかからないので、条件の整うところではやって欲しい。
座長: 私も田渕先生と大体同じ意見で、田渕先生は濃度に対して比例的と仰ったが、私は幾何級数的に効くのではないかと思っている。
山根: 今日、下妻で茨城県の母親大会というのがあり、その分科会の一つが「水は命」というテーマでその司会役をやってきた。その分科会のサブタイトルは「霞ヶ浦の水は飲めるの?」、「コイヘルペスはなぜ起きたの?」というもので、水の質についていろんな意見交換がなされた。その中で話されたことを踏まえて3点ほどお尋ねしたい。
一つは、COD、窒素、リン等、環境基準を超える水を飲んでいるが、どのようなことで安全が保障されているのか。
二つ目は、CODや窒素・リンについては、基準・指標が話されているが、化学物質はいかがか。また、いかなる対応を行政として考えているのか。
三つ目は、飲み水として利用することをあきらめるというシナリオはあり得るのか。
座長: 先ず、霞ヶ浦の水を飲まないという代替措置はあり得るのかについて、水・土地計画課。
海野: 本県は、特に県南部では水源の80%に相当するほどの水を霞ヶ浦に頼っている。県内の水道の普及率が低かった時点では、余り県外のダムには参画しなかったが、最近は、利根川上流の県外のダムにも参画して水量を確保している。それでも80%相当は霞ヶ浦の水であり、霞ヶ浦の水に頼らずに水道水、工業用水、農業用水を確保することは非常に困難な状況にある。
座長: では、水の安全について企業局。
三輪: この4月に水質基準が50項目に改定強化されています。水道に関する水質検査としては全部で217という膨大な項目について検査を実施しています。そして,毎日,水質基準をクリアする水道水を送っています。特に霞ヶ浦の浄化方法としては、沈殿、ろ過の後、粒状活性炭を通して送っている。
座長: 項目は色々あるが、チェックはどのようにしているのか。
三輪: 各々に基準値があり、それら全てをクリアするということで送っている。
座長: 化学物質等について国。
所長: 霞ヶ浦の中の水質等も含め、公共用水域について、COD、N、Pの他に重金属等、よく生活項目や環境項目があるが、県と調整しながら監視している。
升  : 私たち獣医師は、豚や牛など畜産の動物たちに過剰な抗生物質、ホルモン剤が投薬されているという指摘に対して対策をしていくという方針を茨城県獣医師会で3月に立てた。霞ヶ浦流域には大量に畜産の糞尿が出るが、我々が投薬する薬は、全部からだの中に吸収されないで、かなりの量がそのまま出てくる。堆肥になる糞尿の安全性向上に少しでも貢献する。
あと、獣医師会のメンバーとしても届かないのがコイの飼料だ。畜産課では把握されていると思うが、霞ヶ浦の養殖でのエサ等で抗生物質等の混入は禁止しているか。
和田: コイについては担当部署である漁政課、水産振興課でないと分からない。
升  : 恐らく水道水源なので、コイ養殖での添加剤は禁止されているはずだと思う。
和田: コイは専門部署の職員が参っていないので、追ってご報告ということでよろしいか。
升  : 是非、安心できる報告を。
中村: 茨城県霞ヶ浦北浦水産事務所の中村です。水産用薬品、未承認薬品は使ってはいけないという法律があり、コイのエサについても、承認されたものしか使われていない。
それから、先ほどの話と関連して部分で述べさせていただきたい。輸入等でN、P等が流域に入ってきて、それが除去されないことで流域内に栄養成分が蓄積されてしまうのではないかというご指摘、あるいは、漁獲によるN、Pの除去をもっと進めるべきではないかという話があったが、霞ヶ浦の漁獲量は、最高値の1/12、1,400t台まで減少している。しかし、テナガエビやハゼ類、ワカサギ、シラウオ等、美味しい漁獲物を、地元の産物として流域の皆さんが率先して食べていただくということが、N、Pを霞ヶ浦から除去するということにつながる。地元で取れる美味しい水産物を見直していただきたい。
野原: 私は玉造町の手賀という養殖の盛んなところに住んでいる。昨年の10月にコイヘルペスの問題が起きてから1年になる。専門家の先生は、霞ヶ浦の汚染要因として養殖業が1割、あるときは3割占めるというご意見を頂戴していたが、この1年でそのデータがどう変わったのか。幾らかの変化を来たしているのか。
それから、浚渫による影響が色々の面で白濁まで含めて起きているのではないかという懸念がある。
それから、ごく最近の新聞報道によると、ハクレンが大きいものも小さいものも死んでいるが、原因が分からないとのこと。原因が分からないから対策が出てこない部分がかなりあると思う。
幾浦: コイの養殖については、コイヘルペスの関係で、昨年来から移動禁止措置をとるとともに、今年の3月31日で、養殖のコイを全部処分した。その後の水質の変化状況については、まだ解析・解明はされていない。ただ、コイの養殖計画を立てるときに排出負荷量の計算を行うが、CODでいえばコイ養殖が占める割合は6.8%、窒素では5.8%、リンでは19.6%ということであり、何らかの形で影響はあると思う。
座長: 10%以下の話であるので、すぐに効果、結果が出るとは限らないだろう。多少長い目で見る必要があると思う。
大変申し訳ないが、時間が来てしまったので、ここでお話し合いを打ち切らせていただき、これまでの行政側の動きについて報告をお願いしたい。

フォローアップ委員会霞ヶ浦部会の報告

     水資源機構霞ヶ浦開発総合管理所より、8月19日に開催されたフォローアップ委員会霞ヶ浦部会の審議結果の概要について説明を行った。

霞ヶ浦水位運用試験計画についての説明

     国土交通省霞ヶ浦河川事務所より、霞ヶ浦水位運用試験の実施計画について説明を行った。

田村・沖宿戸崎地区自然再生協議会(仮称)についての説明

     国土交通省霞ヶ浦河川事務所より、田村・沖宿戸崎地区自然再生協議会(仮称)についての説明を行った。

第1回霞ヶ浦ふれあい巡視の実施報告と今後の予定について説明

     国土交通省霞ヶ浦河川事務所より、第1回霞ヶ浦ふれあい巡視(7/17開催)の実施報告と今後の予定について説明を行った。

座長より提案

座長: 最後に私からお願いがある。これまで意見交換会を8回実施してきた。毎回、大変活発ではあるが、煮詰まらない形で終わったりしており、また、毎年何回も開催するべきというご意見もあったが、行政側の対応としては手一杯のところがあり、今年度は2回の開催予定となっている。
こういう現状から、もう少しこれを改善する方向として、住民と行政担当者との話し合いは重要であるが、もう少し実のあるものにするために、住民側もお互いに連携しながらある問題を煮詰めてから、テーマは狭くても行政側と煮詰まった話ができるような機会を持ちたい。と同時に、例えば河川事務所では、これから河川整備計画を進める上で住民の意見を聞くことになっているが、住民とは誰かという問題がある。したがって、我々としては、主義主張をしよう、運動をしようということではなく、霞ヶ浦に興味・関心を持つ住民としての個人あるいは団体、そういうものをある一つのネットワークとして名簿のようなものを作り、このネットワークの意見に対して行政が対応していき、一方で、住民側は、このネットワークで考えたこと、整理したことについて、機会を捉えて行政側に具体的な話を聞いたり討論したりする、といった組織あるいは仕掛けを作ってはどうかと思う。これについて河川事務所にお願いしたところ、皆さんのご賛同が得られれば良いということであった。
そこで、ここで皆さんのご賛同をいただけるならば、具体的な話に展開していきたい。大勢で集まるのも大変であるので、実は今年の2月に第8回意見交換会の開催前に、今後意見交換会をどのように進めるべきかということについて議論するためにお集まりいただいた20名余りの方々に呼びかけをし、その他、ご参加いただける方は河川事務所にご連絡をしていただいて、そういう方々に集まっていただいて検討会を行い、結果について次回の意見交換会で皆さんにお諮りするという形で進めたいと考えている。いかがか。ご賛同いただけるようであれば、拍手をお願いしたい。

(会場から拍手)

では、ご了承いただけたということにして、河川事務所の方、お願いできるか。
所長: はい。
座長: では、今のところ事務所を通じての他にやりようがないので、また事務所を通じて進めたいと思うので、よろしくお願いしたい。

閉会の挨拶

司会: 大変活発なご意見を頂きましてありがとうございました。次回、第10回の意見交換会は3月上旬に「霞ヶ浦の水辺環境」をテーマに開催する予定。詳しい日程については記者発表のほか、ホームページ等でご覧いただければと考えている。
それでは、以上を持ちまして第9回霞ヶ浦意見交換会を閉会させていただきたいと思います。本日は誠にありがとうございました。

(会場から拍手)




注:

本稿は、第9回霞ヶ浦意見交換会における意見交換の内容を要旨としてとりまとめたものです。詳細な意見交換の内容が必要な方は、意見交換会事務局まで連絡を頂ければ速記録を公開いたします。


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